「組織のデータをここに貼り付けることはできません」というメッセージは、会社のセキュリティ機能が働いているサインです。
これはパソコンの故障ではなく、情報漏洩を防ぐための大切な仕組み(DLP)が原因で表示されています。
この記事では、エラーが表示される5つの具体的な原因と、管理者・利用者それぞれの立場でできる正しい対処法を分かりやすくお伝えします。
無理にコピペしようとせず、まずは原因を理解して安全な方法でデータを扱いましょう。
組織のデータをここに貼り付けることはできませんという表示が出る5つの原因を解説
- そもそもデータ損失防止(DLP)とは
- データ損失防止(DLP)ポリシーによるコピー&ペーストの制限
- Microsoft Purviewによる情報保護機能の発動
- 秘密度ラベルによるコンテンツの分類と保護
- Teams独自のセキュリティポリシーによる操作ブロック
- ChatGPTやCopilotなどAIへの情報漏洩対策
そもそもデータ損失防止(DLP)とは
データ損失防止(DLP)とは、会社の大切な情報が、うっかり外に漏れてしまわないように見張ってくれる「門番」のような仕組みのことです。
なぜなら、社員の不注意によるミスで重要なデータを外部へメールしてしまったり、許可されていないWebサービスに貼り付けてしまったりするのを、自動で防ぐ役割を持っているからなんです。
例えば、会社のパソコンで「顧客リスト」や「新製品の企画書」といった、とても大事なファイルを扱っているとしますよね。
DLPは、そういったファイルが会社のルールに反して外に持ち出されそうになった時に、以下のような形でブロックしてくれます。
- 個人のメールアドレス宛にファイルを添付して送ろうとすると、警告が出て送信できない
- USBメモリに重要なファイルをコピーしようとしても、エラーになって保存できない
- 会社の許可していないクラウドサービスに、ファイルをアップロードしようとすると失敗する
このように、DLPは私たちが意図しない情報漏洩を未然に防ぎ、会社全体の信用や大切なデータを守るために、裏側で働いてくれているとても重要なシステムなんですよ。
データ損失防止(DLP)ポリシーによるコピー&ペーストの制限
「組織のデータをここに貼り付けることはできません」というメッセージが表示されるのは、会社の定めたデータ損失防止(DLP)のルール(ポリシー)によって、コピー&ペーストの操作が止められているからです。
これは、会社の重要な情報が、許可されていないアプリケーションや場所に、簡単に貼り付けられてしまうのを防ぐためのセキュリティ対策の一つなんですね。
具体的には、会社のシステム管理者が「この情報は、ここ以外には貼り付けちゃダメ」というルールをあらかじめ設定しています。
例えば、以下のようなルールが考えられます。
- 「個人情報」が含まれる文章は、会社の管理外のWebサイトには貼り付け禁止
- 「社外秘」と指定されたExcelのデータは、WordやPowerPointには貼り付けできるけど、メモ帳や外部のチャットツールには貼り付け禁止
- 会社の業務用チャットの内容は、クリップボードにコピーすること自体を禁止
あなたが何気なく行ったコピー&ペーストの操作が、実はこうした会社のセキュリティルールに触れてしまった時に、DLPがそれを検知してブロックし、あのアラートメッセージを表示しているというわけです。
つまり、エラーが出たのはパソコンの故障ではなく、会社のデータを守るための仕組みが正しく働いている証拠だと言えます。
Microsoft Purviewによる情報保護機能の発動
このエラーメッセージは、マイクロソフトが提供している「Microsoft Purview(マイクロソフト パビュー)」という情報保護ツールが働いているサインかもしれません。
Microsoft Purviewは、WordやExcel、Teamsといった個別のアプリだけでなく、会社で使っているマイクロソフトのサービス全体に網をかけて、大切なデータを守ってくれる統合的なセキュリティソリューションなんです。
イメージとしては、会社のデータ全体を隅々まで監視してくれる、とても賢くて強力なセキュリティガードのような存在ですね。
Microsoft Purviewは、主に以下のような働きをします。
- データの発見と分類:ファイルの中身を自動で解析し、「機密情報」「個人情報」などのラベルを付ける
- データの保護:付けられたラベルに応じて、アクセスできる人を制限したり、印刷やコピーを禁止したりする
- 情報漏洩の防止:保護されたデータが外部に持ち出されそうになった時にブロックし、警告を出す
つまり、あなたがコピーしようとしたデータが、このMicrosoft Purviewによって「これは保護すべき重要な情報ですよ」と認識されている場合に、貼り付け操作がブロックされることがあるんです。
会社がMicrosoft 365を導入しているなら、このMicrosoft Purviewがエラーの原因となっている可能性は非常に高いでしょう。
秘密度ラベルによるコンテンツの分類と保護
ファイルやメールに付けられている「秘密度ラベル」が、コピー&ペーストをできなくしている原因の一つとして考えられます。
秘密度ラベルとは、文書やデータの一つひとつに「社外秘」や「部外秘」、「公開」といったレッテルを貼るような機能のことです。
そして、そのレッテル(ラベル)の重要度に応じて、印刷やコピー、メール送信といった操作を自動で制限できる仕組みになっています。
例えば、会社で以下のような秘密度ラベルのルールが設定されているとします。
| ラベル名 | 想定される情報 | 制限される操作の例 |
| 極秘 | 経営に関わる最重要情報 | 印刷、コピー、画面キャプチャ、転送の禁止 |
| 社外秘 | 従業員のみが閲覧できる情報 | 外部へのメール送信、外部サービスへの貼り付け禁止 |
| 一般 | 社内での共有が許可された情報 | 特に制限なし |
| 公開 | 社外に公開しても良い情報 | すべての操作が可能 |
あなたが「社外秘」のラベルが付いたWord文書から文章をコピーして、会社の許可していないチャットツールに貼り付けようとすると、このルールに基づいて操作がブロックされるというわけです。
ファイルを開いた時に、上部や下部に「社外秘」といった表示がないか確認してみるのも、原因を特定する一つの方法ですよ。
Teams独自のセキュリティポリシーによる操作ブロック
Microsoft Teamsを使っている時にこのエラーメッセージが出るのであれば、Teamsに特化して設定されたセキュリティポリシーが原因かもしれません。
Teamsは、チャットやファイル共有など、社内の重要なコミュニケーションのハブとして使われることが多いため、情報漏洩を防ぐための独自のルールが細かく設定されていることがあるんです。
会社のシステム管理者は、他のOfficeアプリとは別に、Teamsだけで有効になる特別な制限をかけることができます。
具体的には、以下のような設定が考えられます。
- チャットメッセージのコピー制限:Teamsのチャットに投稿されたテキストを、他のアプリにコピー&ペーストできないようにする。
- 外部とのファイル共有禁止:会社の外部の人(ゲストユーザー)との間では、特定のファイルを共有できないようにする。
- 画面共有の範囲制限:デスクトップ全体の共有は禁止し、特定のアプリのウィンドウしか共有できないようにする。
もし、Teamsでの会議中にチャットで共有されたURLをメモ帳に貼り付けようとしてエラーが出た場合、それはまさにこのTeams独自のポリシーが働いている可能性が高いです。
このように、使っているアプリそのものに、特別なセキュリティルールが設けられているケースもあることを覚えておきましょう。
ChatGPTやCopilotなどAIへの情報漏洩対策
最近特に増えているのが、ChatGPTやCopilotといった便利な生成AIツールに、会社の情報を貼り付けようとしてエラーが表示されるケースです。
これは、会社の機密情報がAIの学習データとして利用されたり、意図せず外部に漏れたりするのを防ぐための、企業側の新しいセキュリティ対策が原因となっています。
生成AIは業務の効率を大きく上げてくれる一方で、使い方を誤ると重大な情報漏洩につながるリスクもはらんでいます。
- 入力した情報が、AIサービスのサーバーに保存されてしまう可能性がある。
- AIが学習することで、他のユーザーへの回答に自社の情報が使われてしまうかもしれない。
- 会社の未公開の新製品情報や、顧客の個人情報などが、意図せず外部に流出してしまう恐れがある。
こうしたリスクを避けるために、多くの会社ではデータ損失防止(DLP)ポリシーを更新し、特定のAIサービスのWebサイトに対して、社内データのコピー&ペーストをブロックするように設定しているんです。
そのため、業務の参考にするため、社内の資料をAIに要約させようとした際などにこのメッセージが出たら、会社がセキュリティ上の理由でAIへの情報入力を禁止している可能性が非常に高いと言えるでしょう。
組織のデータをここに貼り付けることはできませんと表示された時の原因別対処法
- 【管理者向け】セキュリティポリシーの設定解除手順
- 【ユーザー向け】正規の手順でデータを共有する方法
- クリップボードへのアクセス許可設定の見直し
- エラーを無視して貼り付けた場合のリスク
- 深刻な情報漏洩につながる危険性
【管理者向け】セキュリティポリシーの設定解除手順
セキュリティポリシーの設定変更や解除は、Microsoft Purviewの管理画面から行うのが基本です。
ただし、ポリシーを安易に解除してしまうと、会社の情報セキュリティに大きな穴を開けてしまうことになりかねません。
解除を行う前に、なぜその操作が必要なのか、他に代替手段はないのかを慎重に検討することがとても大切になります。
もし、特定の業務でどうしてもコピー&ペーストが必要な場合は、以下の手順でポリシーの見直しを検討してみてください。
ポリシー見直しの基本的な流れ
- Microsoft 365の管理者アカウントで「Microsoft Purview コンプライアンス ポータル」にサインインします。
- 左側のメニューから「データ損失防止」を選択し、該当するポリシーを探します。
- ポリシーの編集画面を開き、「アクション」の項目で制限内容を変更します。
たとえば、「特定のユーザーグループだけ制限を解除する」とか、「社内で許可された特定のアプリへの貼り付けだけを許可する」といった、柔軟な設定も可能です。
やみくもに全体の制限を緩めるのではなく、影響範囲を最小限に抑える形で対応するのが鉄則と言えるでしょう。
設定変更には専門的な知識が必要なため、自信がない場合は、必ずセキュリティ部門や専門のベンダーに相談しながら進めてくださいね。
【ユーザー向け】正規の手順でデータを共有する方法
コピー&ペーストがブロックされた時は、会社が定めた正規のツールや手順を使って、安全にデータを共有するようにしましょう。
エラーが出るということは、その操作がセキュリティ上「危険」だと判断されているサインです。
無理にコピペしようとせず、会社が推奨する安全な方法に切り替えるのが正解ですよ。
一般的に、多くの会社では以下のような安全な共有方法が用意されています。
Teamsのチャネルやチャットで共有する
チーム内のメンバーとファイルや情報を共有するなら、これが最も簡単で安全な方法です。
誰がアクセスできるかがきちんと管理されているので、情報が意図しない相手に渡る心配がありません。
SharePointやOneDriveの共有リンクを利用する
社外の人とファイルを共有する必要がある場合は、共有リンク機能を使うのがおすすめです。
「閲覧のみ」「編集可能」といった権限を細かく設定できたり、リンクの有効期限を設けたりすることもできます。
ファイル自体をメールに添付して送る
昔ながらの方法ですが、相手が限定されている場合は有効な手段です。
ただし、DLPポリシーによっては、ファイルの内容をチェックされ、機密情報が含まれていると送信自体がブロックされることもあります。
もし、どの方法を使えば良いか分からない場合は、自己判断で進めずに、まずは上司や情報システム部門に「この情報を〇〇さんと共有したいのですが、どうすれば良いですか?」と相談するのが一番確実で安全な方法ですよ。
クリップボードへのアクセス許可設定の見直し
会社のセキュリティポリシーとは別に、お使いのパソコンやWebブラウザ自体の設定が、貼り付けを邪魔している可能性も少しだけ考えられます。
特にWebブラウザには、表示しているサイトが勝手にクリップボードの中身を読み取らないように、アクセスを制限する機能が備わっているんです。
一度、以下の設定を確認してみるのも良いかもしれません。
Windowsの場合
- 「スタート」メニューから「設定」を開きます。
- 「プライバシーとセキュリティ」の中にある「クリップボード」を選択します。
- 「クリップボードの履歴」などがオンになっているか確認します。
Google Chromeの場合
- 右上のメニュー(︙)から「設定」を開きます。
- 「プライバシーとセキュリティ」の中の「サイトの設定」に進みます。
- 「権限」の項目にある「クリップボード」を選択します。
- 「サイトにクリップボードの表示を許可する」がオンになっているか確認します。
ただ、多くの会社では、こうした個人の設定も情報システム部門が一元管理している場合がほとんどです。
そのため、自分で設定を変更できなかったり、変更しても解決しなかったりすることの方が多いかもしれません。
あくまで原因切り分けの一つの可能性として試してみて、ダメならやはり会社の管理者に問い合わせるのが一番の近道だと言えます。
エラーを無視して貼り付けた場合のリスク
エラーメッセージを何らかの抜け道を使って回避し、無理やりデータを貼り付けてしまうと、後で大きなトラブルに発展する可能性があります。
あのアラートは、あなたと会社を情報漏洩のリスクから守るための大切な「警告」です。
それを無視する行為は、赤信号をわざと無視して交差点に進入するのと同じくらい危険なことなんですよ。
もし警告を無視してしまうと、具体的には以下のようなリスクが考えられます。
- 会社の就業規則やセキュリティポリシー違反として、懲戒処分の対象になる可能性がある。
- 「誰が、いつ、どの情報を、どこへ貼り付けようとしたか」という操作の記録(ログ)がシステム上に残っており、管理者に通知されている。
- 許可されていないWebサイトやツールに貼り付けた結果、そこからウイルスに感染してしまうかもしれない。
- 最悪の場合、情報漏洩事故の引き金となり、会社に多大な損害を与え、個人が責任を問われるケースもゼロではない。
少し面倒に感じても、エラーメッセージはあなたを守るための重要なサインです。
決して軽視したり、安易な方法で回避しようとしたりせず、定められたルールに従うようにしてくださいね。
深刻な情報漏洩につながる危険性
たった一度の軽い気持ちで行ったコピー&ペーストが、会社の信用を根底から揺るがすような、深刻な情報漏洩事故に直結する危険性があります。
なぜなら、一度インターネットの世界に流出してしまったデジタルデータを、後から完全に消し去ることはほぼ不可能だからです。
その情報は「デジタルタトゥー」として残り続け、いつどこで悪用されるか分からない、とても怖い状態になってしまいます。
例えば、貼り付けた情報の内容によって、以下のような最悪の事態が想定されます。
| 貼り付けた情報 | 起こりうる最悪の事態 |
| お客様の個人情報 | 個人情報保護法違反による罰金や、お客様からの損害賠償請求に発展する。 |
| まだ公開していない新製品の情報 | 競合他社にアイデアを盗まれ、会社のビジネスに大きな打撃を与える。 |
| 取引先との契約内容 | 相手方との信頼関係が完全に壊れ、取引停止や訴訟問題に発展する。 |
「このくらいなら大丈夫だろう」という油断や、「少しだけならバレないだろう」という甘い考えが、結果的に取り返しのつかない事態を引き起こす原因となります。
「組織のデータをここに貼り付けることはできません」というメッセージは、こうした最悪の未来を防ぐための最後の砦だと考え、真摯に受け止めることが何よりも大切です。
組織のデータをここに貼り付けることはできませんのまとめ
- このエラーメッセージは、情報漏洩を防ぐDLP(データ損失防止)機能が作動していることが主な原因です。
- Microsoft Purviewや秘密度ラベルの設定により、重要なデータのコピー&ペースト操作が制限されます。
- TeamsやChatGPT、Copilotなど、特定のアプリへの貼り付けがセキュリティポリシーで禁止されている場合があります。
- ユーザーは無理にエラーを解除しようとせず、TeamsやOneDriveなど会社が許可した正規の方法でデータを共有しましょう。
- 管理者はMicrosoft Purviewからポリシー設定を変更できますが、セキュリティリスクを十分に考慮する必要があります。
- 警告を無視して貼り付ける行為は、情報漏洩事故につながる深刻なリスクを伴うため、絶対に行わないでください。
- エラーは会社のデータを守るための正常な動作であり、まずは原因を理解し正しい対処法をとることが重要です。